いつの時代も臨床で働いている看護師の悩みの1つにあるのが、「新人看護師教育」だと思います。
しかし、新人看護師教育だけでなく、日々の看護業務において「後輩指導に不安」を持っていたり、「教育方法に悩む」看護師の方は非常に多いと思います。
そこで皆さんはこんな悩みはありませんか?
・日々の臨床現場での看護師教育のポイントってなに?
・他施設の現状や看護教育ってどうやっているの?
・認定看護師が指導を行う際のポイントってあるの?
今回の記事では、これらについて皆さんにお伝えしていきたいと思います。
・臨床現場での看護師教育のポイント
・他施設の現状や看護教育の実際
・認定看護師が指導を行う際のポイント
忙しい日々の現場ですが、指導や教育の方法を変えれば、対象者(新人看護師・後輩)に変化をもたらすことができるかもしれません。
【結論】結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!
<看護師教育のポイント>
結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!
看護師教育におけるポイントは、「結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!」ことだと思います。
日々の看護業務では、「評価・観察」を行いそれらから得られた情報をもとに「アセスメント」をおこない、患者さんに行う看護実践として適切か否かを判断し、実践して再評価を行うと思います。
これらの看護実践を行う中でやりがちなのは、「結論(看護実践)」のみを指導してしまうことです。
忙しい看護業務の中で、新人看護師や後輩看護師に看護業務を指導する際にこのような事は言ったりしていませんか。
患者さんの
・点滴交換しておいて
・離床しておいて
・吸引しておいて
・ポジショニング(ヘッドアップ)しておいて
・モニターつけておいて
・食事介助しておいて
・家族の希望確認しておいてなどなど
これでは教育や指導ではなく「指示」になってしまいます。これらの看護業務においては、必ず「評価・観察」→「アセスメント」→「看護実践」における思考過程があると思います。この皆さんの思考過程を対象者(新人看護師・後輩)に伝え理解してもらうことが、学びを深めることに繋がると思います。
なるほどね、、、。
でも忙しい日々の看護業務の中でそんなこと可能なの?
そうだね。
忙しい中でなかなか時間が取れないし難しいこともあるよね。
当院での看護教育の実際を紹介しながら解決策も伝えていくね。
当院における看護教育の実際
当院の看護教育システムは上記の図になります。
教育専従看護師を筆頭に、各病棟に教育担当者が1名配置され、教育担当者を集めて教育委員会を開催しています。また、教育委員会では、下記の事を検討しています。
・院内ラダー研修の内容や開催時期の検討
・新人看護師の進捗状況を情報共有し問題点の明確化
・各部署における看護教育の情報共有と問題点の明確化
・院内研修の企画や運営などなど
院内における看護教育の方向性などを検討していますが、「各病棟における経験年数の差」・「看護教育に関する知識の差」などがあり、教育委員会や教育担当者だけで日々の臨床における看護教育を担うのは限界があるのが現状です。
これらの現状の問題点を皆さんと共有していきたいと思います。
皆さんの施設では、どのような問題点がありますか?
当院と同じような問題点でしょうか?
<現状の問題点>
全国には大学病院をはじめとして、地域の中核病院やクリニック等の診療所、訪問看護や施設などなど看護師が働く場所は何通りもあります。
施設背景が違えば、看護教育においての問題点も異なると思いますが、当院における現状の問題点としては、「各病棟における経験年数の差」・「看護教育に関する知識の差」があります。
この2つに関してもう少し紐解いていこうと思います。
各病棟における経験年数の差
当院の場合は、救急外来や集中治療室などは新卒の配置がないのが現状です。そうなると比較的経験年数は高くなっているのが現状です。その他に外来や検診センター、緩和病棟なども一般病棟と比較して経験年数が高い傾向にあります。
一概に経験年数が高い病棟(上記のB病棟)だから看護教育が充実しているかといえばそうではありません。ですが、当院ではこのような特徴があります。
・臨地指導者研修等で指導の方法を習得している看護師が多い
・経験を踏まえた指導を行える
・部署内での教育プログラムが充実
・業務に余裕があり指導が充実などなど
当院の場合は、経験年数が高めの病棟は経験年数が低めの病棟より「臨地指導者研修等で指導の方法を習得している看護師が多い」「部署内での教育プログラムが充実」しています。
特に臨地指導者研修等を受講していると、学生だけでなく臨床現場における看護師の指導方法等も学んでいるので、指導方法に差がでていると思います。
経験年数が高い病棟はなんか怖そう、、、。
ちょいちょい、、、。
それはどういう意味だい、、、。
看護教育に関する知識の差
各年代によって異なるかもしれませんが、私の時代では看護学校等で指導のポイントなどを学ぶ機会はありませんでした。そんな状況で臨床に出ても教育や指導など未知の事で、臨床でいきなりやるのは無理があると思います。
当院では院内ラダーなどで「コーチング」「ティーチング」などを学ぶ機会がありますが、一度受講して実践できる方は限りなく少ないのが現状です。指導や教育に関しては、継続的に学び実践する事で身に付く力だと思います。
方法はわかってはいるけど、
日々の業務が忙し過ぎで実践できてないだけじゃない?
確かにその可能性はあるね。
今ある現状でどう解決していくかを考えていく必要があるよね。
新人看護職員研修ガイドライン
ここでは、新人看護職員研修ガイドラインをご紹介します。
新人看護職員研修ガイドラインとは、
看護は、人の生涯にわたるヘルスプロモーションとして重要な社会的機能の一つである。 その職業人としての第一歩を踏み出した新人看護職員が、臨床実践能力を確実なものとす るとともに、看護職員としての社会的責任や基本的態度を修得することは極めて重要であ る。本ガイドラインは、新人看護職員が基本的な臨床実践能力を獲得するための研修とし て、医療機関の機能や規模にかかわらず新人看護職員を迎えるすべての医療機関で研修を 実施することができる体制の整備を目指して作成された。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000049466_1.pdf)
詳細は厚生労働省における新人看護職員研修ガイドラインをご参照ください。
新人看護職員研修ガイドラインを少しだけご紹介しますが、研修における組織の体制としてガイドラインでは、例として下記のような体制が示されています。
当院の看護教育の実際をお伝えしてきましたが、当院の教育体制は新人看護職員研修ガイドラインに沿った体制でした。
すごい!!
意外にちゃんとやってるじゃん!!
なに目線よキャン子、、、。
新人看護職員の研修企画や指導だけでなく、臨床における看護師教育に大切な役割があるのは実際に臨床で指導する立場にある「実地指導者」だと思います。臨床での看護師教育を充実させるためには、この「実地指導者」の役割がある看護師の皆さんが指導や教育のポイントを理解してもらい実践してもらうことが大切だと思います。
では、「実地指導者」の方々におさえていただきたい内容をお伝えしていきたいと思います。また、そのために当院で行っている事をご紹介していきたいと思います。
【解決策】結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!
最初の項目である【結論】で述べた通り、「実地指導者」の方々に抑えていただきたいのは、結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!事です。
患者さんの
・点滴交換しておいて
・離床しておいて
・吸引しておいて
・ポジショニング(ヘッドアップ)しておいて
・モニターつけておいて
・食事介助しておいて
・家族の希望確認しておいてなどなど
を指導する際に、結論だけでなく「実地指導者」がどのように「評価・観察」→「アセスメント」→「看護実践」したかの思考過程を対象者に伝えることが大切です
この皆さんの思考過程を対象者(新人看護師・後輩)に伝え理解してもらうことが、学びを深めることにつながると思います。
そして、その対象者の考える力になると思います。
・なぜ点滴をしているのか?
・なぜ離床が必要なのか?
・なぜ吸引が必要なのか?
・なぜポジショニング(ヘッドアップ)が必要か?
・なぜモニター管理が必要か?
・なぜ食事介助が必要か?
・なぜ家族の希望確認が必要なのか?
その思考過程を伝えることで、日々の学びが違うと思います。そして、対象者が今後指導を行う際の糧になると思います。その繰り返しが、臨床における看護の質に繋がると思います。
では、当院でどのような解決策を行なっているかをお伝えしてします。
当院では、
・実施指導者の指導
・院内認定制度の活用
を行なっています。
実地指導者の指導
院内における看護師教育を充実させるためには、「実地指導者」の一人一人の指導方法を充実させることが大事だと思います。
その為、院内ラダーとは別に「実地指導者」を教育する研修を企画し、「実地指導者」が共通の認識を持って質の高い指導がベッドサイドで行えるように研修を開催しています。
「実地指導者」の指導する質を上げることで、看護師教育が充実され質の高い看護師が育つ=質の高い看護が実施できるように教育委員会が中心となり頑張っております。
確かに良い指導が受けれれば、質の高い看護師が育つ可能性が高いね!
そうだね!
その指導を受けた看護師は、先輩の指導を見習って自然に指導方法を理解して、次の後輩指導に活かせて良い循環が生まれるかもしれないね。
院内認定制度の活用
当院では、様々な分野の認定看護師が、自分の分野の知識を院内に広めるために院内独自の認定制度として、「院内認定制度」を行なってコアメンバーの育成に励んでいます。
現在は下記の5分野の認定看護師が院内認定制度を行い、コアメンバーを育成して院内の看護の質を向上できるように受講生と共に学びを深めています。
・感染管理
・皮膚、排泄ケア
・がん化学療法
・認知症看護
・クリティカルケア
キャンタマが担当しているのは、「クリティカルケア」として急性期看護について研修を企画して院内認定制度を運営しています。
また、院内認定制度のカリキュラムにおいては、臨床における指導のポイントについて研修内容に組み込み、臨床の看護師に対してより良い指導ができるように研修に参加していただいている受講者の方と日々学びを深めています。
もし、認定看護師に興味がある方は、下記の記事を参照ください。
まとめ
日々の忙しい業務の中で、新人教育だけでなく看護師の指導においても時間や労力が非常にかかります。
教育や指導を行う上で大切なことは、何気ない看護においても、結論(看護実践)だけでなく思考過程を伝える!ことだと思います。
日々のベッドサイドでの時間を有効活用して、よりより看護師教育や指導ができるように共に頑張りましょう。
この記事以外にも、新人看護師におすすめの書籍や、勉強会開催のポイントなども記事にしています。興味のある方は下記の記事をご参照下さい・