臨床で働いていると、人工呼吸器を装着している患者さんを看護する機会が、施設によって様々ですが一般病棟でも年間に数回はあると思います。
それも、大概が忘れた頃に看なくてはいけなく、多くの方が不安を持ちながら日々看護を実践しているのではないでしょうか。特に、人工呼吸器のアラームは鳴った時や、患者さんのバイタルサインが変化した時は、どのように対応すれば良いか不安や恐怖を感じると思います。
医師へ報告しても、医師がベッドサイドへ来るには時間がかかり、看護師だけで対応しなくてはいけない時も少なからずあると思います。
そんな中で、皆さんのこのような疑問をお持ちではありませんか?
・人工呼吸器装着患者さんが急にバイタルが変化したんだけ対応は?
・人工呼吸器のアラームが鳴ってるんだけど対応はどうすれば?
そんな時は、「DOPE」で原因検索することが大切です!
・人工呼吸器装着患者さんのトラブル解決方法「DOPE」
【結論】人工呼吸器トラブル=DOPEで原因検索することが大切
人工呼吸器装着患者さんを受け持ち看護を実践する際に不安を感じるときは、人工呼吸器のアラームは鳴った時や、患者さんのバイタルサインが変化したときだと思います。
本来であれば急変時は、いかに冷静に考え様々な視点でアセスメントを行い実践するかが大切です。しかし、急変時に冷静にアセスメントして実践することはなかな難しいです。
その際は、この「DOPE」に沿って実践することで、人工呼吸器装着患者さんの急変や人工呼吸器装着に伴うトラブルの原因検索を行うことができると思います。
・用手換気に切り替えて人工呼吸器の問題を排除
・挿管チューブの固定状況や挿入長さを確認
・痰などによるチューブの閉塞の有無
・チューブの閉塞の有無
・患者背景も考慮し身体所見から気胸の有無を評価
・特に緊張性気胸には留意
人工呼吸器の役割
日々の臨床で、人工呼吸器を装着している患者さんは、どのような患者さんでしょうか。
人工呼吸器には様々な役割があります。ここでは主に上記の4つである「酸素化の改善」「呼吸仕事量軽減」「呼吸性アシドーシスの改善」「無気肺の改善」についてお伝えしていきます。
酸素化の改善
「酸素化の改善」では、酸素療法として様々なデバイスを用いても酸素化の改善が見込めない患者さんに、人工呼吸器を用いて酸素化を維持する事を目的としています。
人工呼吸器で酸素化を維持している間に、酸素化を悪化している要因を特定して、原因に対して治療を行い酸素化が改善されれば人工呼吸器を離脱します。
なるほど!
人工呼吸器自体が肺自体の酸素化を改善させるわけではないってことね!
そうだね!
人工呼吸器を装着してその間に原因の治療をするイメージだね!
呼吸仕事量軽減
「呼吸仕事量軽減」とは、酸素化が悪くなると、人は頑張って呼吸を行って酸素化を維持しようとします。その結果として、臨床では「頻呼吸」や「努力呼吸」といった事が観察されます。
しかし、「頻呼吸」や「努力呼吸」などが持続することとによって「呼吸に関わる筋肉」=「呼吸筋」が疲労していつか破綻してしまいます。
そうなる前に、人工呼吸器を装着して呼吸仕事量を軽減し、呼吸仕事量を増大させている要因に対して治療を行います。
なるほどね!
ずっと頑張り続けてしまうといつかは限界が来るもんね!
そうだね!
だから看護師として患者さんを観察する際は、酸素化が悪化する前段階の徴候として、「頻呼吸」や「努力呼吸」といった事を観察していくことが大切だね!
患者さんの急変は看護師として働いていると怖い出来事だと思います。下記の記事では、急変を未然に防ぐための観察方法などをご紹介してます。
呼吸性アシドーシスの改善
肺では二酸化炭素と酸素を交換しています。
その中で、上手く酸素を取り込むことができない際は、動脈中の酸素の量が低下して呼吸不全と言われる状態になります。また、二酸化炭素が一定以上血液中に増えると酸塩基平行では、呼吸性アシドーシスの状態になります。
呼吸不全の定義や呼吸不全の中に1型呼吸不全と2型呼吸不全の分類があり、下記の通りになります。
<呼吸不全の定義>
・動脈血酸素分圧(PaO2):60mmHg以下
<1型呼吸不全と2型呼吸不全の分類>
・1型呼吸不全:二酸化炭素分圧が45mmHg以下
・2型呼吸不全:二酸化炭素分圧が45mmHg以上
動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下の呼吸不全の状態で、二酸化炭素が低ければ1型呼吸不全で、二酸化炭素が高ければ2型呼吸不全と言われています。
呼吸(換気)が上手くできない状態の患者さんは、酸素と二酸化炭素を交換することができず人工呼吸器の助けが必要になります。
なるほど!
二酸化炭素が溜まると呼吸性アシドーシスになってしまうんだ!
そうだね!
なんでもそうだけど、バランスって大切だよね!
無気肺の改善
前回の記事では、低酸素血症の原因とその対応をご説明しました。
無気肺が発症するとシャントが起こり、動脈中の酸素の量が低下して酸素化が悪化します。また、無気肺の程度が大きければ大きいほど、シャントがおこる範囲が増えて酸素化する能力は低下します。
人工呼吸器を装着することで、陽圧換気となり肺胞に圧をかけて無気肺の改善や、容易に無気肺にならないように予防する効果があります。
人工呼吸器トラブルの原因割合
人工呼吸器には様々な役割があり、必要な患者さんに装着されています。
そんな人工呼吸器ですが、様々な要因によりトラブルが発生しており、全日本国立医療労働組合の調査では、上記の様なトラブルが発生しています。
看護師は、そのようなトラブルで鳴るアラームに対してに対して対応していかなければなりません。
人工呼吸器を装着している患者さんのトラブルを解決する方法としては、DOPEで原因検索することが大切だと思います。
人工呼吸器トラブル=DOPEで原因検索することが大切
人工呼吸器装着患者さんを受け持ち看護を実践する際に不安を感じるときは、人工呼吸器のアラームは鳴った時や、患者さんのバイタルサインが変化したときだと思います。また人工呼吸器には、上記のようなトラブルが発生する可能性があります。
本来であれば急変時や機器トラブルなどの際は、いかに冷静に考え様々な視点でアセスメントを行い実践するかが大切です。しかし、そんな時ほど冷静にアセスメントして実践することはなかな難しいです。
その際は、この「DOPE」に沿って実践することで、人工呼吸器装着患者さんの急変や人工呼吸器装着に伴うトラブルの原因検索を行うことができると思います。
Displacement(挿管チューブの位置異常)
<原因>
・チューブが浅くなり抜けかかっている可能性
・チューブが深くなり片肺換気になっている可能性
「DOPE」のD:(挿管チューブの位置異常)に関しては、体位変換やチューブの固定し直しの後などに起こる可能性があります。医師から指示された挿管チューブの挿入長さより、浅くなったり深くなったりすることで、換気に問題が生じます。
「DOPE」のD:(挿管チューブの位置異常)に問題がないか確認する方法は下記になります。
<観察のポイント>
・挿管チューブの深さや固定状況の確認
・呼吸音や胸郭の上がりの左右差
確かに、、、。
体位変換や挿管チューブの再固定のあとは確認していくことが大事ね!
体位変換は日常的に行う看護技術だけど、挿管管理の患者さんでは、挿管チューブを保持しながら安全により配慮して行うことが大切だね!
Obstruction(挿管チューブの閉塞)
<原因>
・痰などによる挿管チューブ内腔の閉塞
・患者が挿管チューブを噛む事による閉塞
・人工鼻等の汚染による閉塞
「DOPE」のO:(挿管チューブの閉塞)に関しては、気道内分泌物が多い事や気道内分泌物の粘稠度が高いことによりチューブ内腔の閉塞や、意識下や痙攣等でチューブを噛んでしまう事により、換気に問題が生じます。
「DOPE」のO:(挿管チューブの閉塞)に問題がないか確認する方法は下記になります。
<観察のポイント>
・呼吸音や胸郭の上がりの左右差
・吸引カテーテル挿入可能か
・目視における挿管チューブの屈曲の有無
・人工鼻等の汚染の有無
Pneumothorax(気胸)
<原因>
・陽圧換気に伴う気胸や緊張性気胸
「DOPE」のP:(気胸)に関しては、人工呼吸器に伴う陽圧換気により気胸や緊張性気胸となり、急激な酸素化低下や、緊張性気胸ではショック状態となる可能性があります。
特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症などの患者さんは気胸になるリスクが高く、人工呼吸器を装着する際は注意する必要があります。
「DOPE」のP:(気胸)に問題がないか確認する方法は下記になります。
<観察のポイント>
・呼吸音や胸郭の上がりの左右差
・緊張性気胸→頻脈、頸静脈怒張、ショック徴候
緊張性気胸とかマジで怖い、、、。
キャンタマも数回現場に立ち会ったけど恐ろしいよね。
緊張性気胸は呼吸だけでなく、循環にも影響を与えてます。ショックの分類では、心外・閉塞拘束性ショックに分類されます。ショックについては下記を参照ください。
Equipment failure(器具の不具合)
<原因>
・回路の接続の緩み
・蛇管のエアー漏れ
・配管の接続不良
・電源接続不良に伴うバッテリー切れ
・人工呼吸器の不具合
「DOPE」のE:(器具の不具合)に関しては、人工呼吸器等による機器トラブルにより正常な人工呼吸器の動作ができず、人工呼吸器の役割を果たせなくなる事による問題です。
「DOPE」のE:(器具の不具合)問題がないか確認する方法は下記になります。
<観察のポイント>
・人工呼吸器装着前に正常に動作するか確認
・各施設に沿った人工呼吸器点検表に沿って確認
なるほどね!
この「DOPE」に沿って評価していけばいいのね!
そうだね!
「DOPE」を下記の手順に沿って評価することで、人工呼吸器装着時のトラブルの原因検索をすることができると思います!
・用手換気に切り替えて人工呼吸器の問題を排除
・挿管チューブの固定状況や挿入長さを確認
・痰などによるチューブの閉塞の有無
・チューブの閉塞の有無
・患者背景も考慮し身体所見から気胸の有無を評価
・特に緊張性気胸には留意
人工呼吸器関連のおすすめ書籍
人工呼吸器を装着している患者さんを看護する上で、人工呼吸器装着時のトラブルの原因検索を「DOPE」を用いて行うことも大切です。
ですが、看護師として最も大切なのは、アラーム対応や人工呼吸器が患者さんに対して適切に呼吸をサポートできているかを評価して、必要時は医師へ繋いでいくことだと思います。
それには、呼吸に関わる解剖生理を理解することは必要不可欠ですが、人工呼吸器の仕組みの理解や各種モードの違いや観察における視点を学ぶ事だと思います。
人工呼吸器とか大嫌い!!
なんかいろんなモードがあるしわけわからんことが多いもん!
そうだよね!
誰もに立ちはだかる高い壁だよね。でも、そんな方にもわかりやすい書籍をご紹介します。
WEB動画で学ぶ人工呼吸管理 基礎がわかれば実践できる
この書籍は、人工呼吸器における仕組みや各種モード、人工呼吸器離脱に関することや急性期リハビリテーションなどが解説されています。文章だけでなく、所々にわかりやすいイラストもあり人工呼吸器の入門書としておすすめの書籍です。
そして、なんと言っても動画がついており文章やイラストだけでは理解できない項目も、動画でわかりやすく紹介されていておすすめです。
しかしまぁあれだね。
いいお値段しますね、、、。
確かに、、、。
でも、人工呼吸器セミナーいくより全然安い気がする!
セミナーって高いですよね。
Table Top Exercise 机上演習で学ぶ人工呼吸器トラブルシューティング WEB動画付
「WEB動画で学ぶ人工呼吸管理 基礎がわかれば実践できる 」の書籍は人工呼吸器の入門書であれば、こちらの書籍は応用編で、臨床における様々なアラームに対する対応方法などをわかりやすく解説されています。
また、何より各種症例を用いて解説されてある項目があり、臨床をイメージしやすくより学びを深めることができる書籍です。
アラーム対応っていつも怖いんだよね。
アラーム対応することができればなんかカッコイイよね!
そうだよね!
アラーム対応するには、人工呼吸器のモードの理解をする必要があるもんね。この書籍は、より臨床をイメージしやすい構成で学びが深まりやすいと思います。
これならわかる! 人工呼吸器の使い方 (ナースのための基礎BOOK)
この書籍は、人工呼吸器における基礎からNPPVやHFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)も網羅されておりこの一冊があれば臨床における疑問が解決される書籍となっています。
特に、各項目がマンガ形式で導入されており勉強しやすく、何よりポケットカードが付いていて臨床で困った際はサッと確認できます。お値段もお手頃な価格で、おすすめの書籍です。
まとめ
今回は、人工呼吸器装着患者さんのトラブル解決方法「DOPE」をご紹介しました。
人工呼吸器のアラームは鳴った時や、患者さんのバイタルサインが変化した時は、人工呼吸器装着患者さんのトラブル解決方法「DOPE」を用いてトラブルを解決する一つの手法として活用していただければ幸いです。
また、看護師として最も大切なのは、アラーム対応や人工呼吸器が患者さんに対して適切に呼吸をサポートできているかを評価して、必要時は医師へ繋いでいくことだと思います。
それには、呼吸に関する解剖生理や人工呼吸器のモード等を理解する必要があります。臨床での学びや書籍での知識を補完して、共により良い看護を導き出して実践していきましょう。
また、新人看護師の皆さんは解剖生理や疾患を理解することも大切です。下記の記事では、新人看護師の方におすすめの書籍もご紹介しています。参考になれば幸いです。