看護師として働き始めたらぶち当たる壁の一つが、「申し送り」です。
私も新人の頃は、非常に苦手でした。そんな看護師社会の「申し送り」について、こんな疑問はありませんか?
・申し送りって何を伝えればいいの?
・いつも先輩に「何いってるかわからん!」って言われる、、、。
・話し方とか伝える順番とか言われてもわからない、、、。
認定看護師数年目のキャンタマが、
症例を用いながら、申し送りのコツやポイントを
皆様にご紹介します。
・申し送りのポイントとは?
・申し送りを効果的に行うフォーマット「I-PASS」とは?
について皆さんと共有できればと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
申し送りのポイント
患者の全体像を把握
申し送りで大切なことは、「患者の全体像を把握する」事だと思います。
患者の全体像を把握することができれば、おのずと申し送りで伝えなければいけない内容がわかると思います。
患者の全体像を把握
・なぜ入院したのか?
・既往歴は?
・現在の治療は?
・検査データは?
・病態生理はどうなっているか?などなど
看護学生の頃によくやった「患者の全体像の把握」ですね。
全体像を把握できていなければ、情報が散らかってしまい
先輩に、、、「何いってるかわからない!」と言われてしまいます。
そんなこと言われても、よくわからないんだけど、、、。
実際にどう「申し送り」知ればいいの?
では実際に症例を使って
・ICU編
・一般病棟編
にわけてお伝えします。
ICU編
<症例>
・60代男性。深夜に胸痛発作があり救急要請。検査の結果、「急性心筋梗塞」でPCI(経皮的冠動脈インターベンション)#7にステント留置しICU入室。
(入室時)
A:発声あり
B:酸素2LにてRR15回/分、SPO2;95%、副雑音なし。
C:HR80回/分、BP120/60、Hr0.5ml/kg/h、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:36.6度
*入室後4時間後と8時間後に採血予定あり。
(入室後3時間)
A:発声あり
B:RR25回/分、SPO2;92%、副雑音:coarse crackles(水泡音)。
C:HR100回/分、BP90/40、Hr0.5ml/kg/h、四肢冷感あり。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:36.6度
→酸素2Lからマスク5Lへ変更しIABP(大動脈内バルーンパンピング)挿入となる。
こんな患者さんの入室から受け持って、次の勤務者に申し送りするときって、どの様に申し送りをすれば?
じゃあ、キャンタマが思う申し送りの
「悪い例」と「良い例」をご紹介します。
何が違うの、、、?
パッと見ると、、、何が違うか分かりにくいですが、
<悪い例>
・入院までの経過が見えない
・急性心筋梗塞なのにいきなりD(意識)項目
・継続してほしいことが欠けている(採血)
この為、次の勤務者が状態を把握しにくいね。
なるほど!!
申し送りで大切なことは、、、
・入院までの経緯や治療方針を含める
・優勢順位を考慮する
・継続してほしい看護や検査を含める
そうだね!
それらが含まれている申し送りだと、次の勤務者もわかりやすいね!
そして、
・なぜ呼吸状態が悪化したのか?
・なぜIABPを挿入することになったのか?
を把握することができてればもっとスムーズに申し送りすることができるよ!!
なぜ呼吸状態が悪化したのか?
・急性心筋梗塞→左心不全→呼吸状態悪化
なぜIABPを挿入したのか?
・後負荷の軽減→心拍出量の増加、心筋酸素消費量の軽減
一般病棟編
<症例>
・80代女性。発熱と呼吸苦があり体動困難となり救急搬送。検査の結果、誤嚥性肺炎にて一般病棟へ入院となる。
・既往に慢性心不全あり。
(入院時)
A:発声あり
B:酸素3LにてRR20回/分、SPO2;94%、副雑音なし。
C:HR 90回/分、BP120/60、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:37.2度
(入院後6時間)
A:発声あり
B:RR25回/分、SPO2;90%、副雑音:rhonchi(いびき音)。
C:HR120回/分、BP130/60、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:38.5度
→吸引施行しRR20回/分、SPO2:94%。腋窩温:38.5度にて解熱剤使用。
こんな患者さんを次の勤務者に申し送りするときって、どの様に申し送りをすればいい?
じゃあ、ICU症例同様に「悪い例」と「良い例」をご紹介します。
これもまた何が違うの、、、?
<悪い例>
・入院までの経過が見えない
・継続看護してほしことがわかりにくい(痰の量)
・患者の全体像を捉えられていない(既往に慢性心不全)
その為、次の勤務者が状態を把握しにくいね。
・「痰の量が多い」=頻回なフジカルアセスメントが必要
・既往に慢性心不全(心機能低下の可能性)=酸素消費量増大→急性心不全への移行の可能性
なんか色んな用語が出てきてわかりにくい、、、。
要は、「患者の全体像を把握」が必要!
ってことね、、、。
でも、もっとわかりやすい申し送りの仕方ってないの?
うん、、、。まぁそういうことだね!
じゃあ、申し送りに効果的な
「I-PASS」というフォーマットを紹介します。
申し送りを効果的に行うフォーマット「I-PASS」
疾患の重症度 | ・大きな介入は不要:安定 ・毎時モニタリングが必要:要注意 ・30分以内のモニタリング:不安定 ・退院または緩和ケア |
患者のサマリー | ・年齢 ・性別 ・初期診断 ・併存疾患 ・直近24時間以内のイベント ・Key topic (血行動態/体液ボリューム、人工呼吸管理、チューブ/ライン/ドレーン、抗生物質、 主な検査所見) |
やることリスト | ・当勤務帯でやること ・誰がいつやるのか |
状態把握と不測の事態の想定 | ・これから24時間で予測される問題は? ・予測される問題への対応 |
受け手の総括 | ・申し送りの受け手がわの質問 ・申し送りの受け手がポイントとやるべきことを再度話す |
「I-PASS」とは?
「I-PASS」とは、アメリカのマサチューセッツ総合病院で取り入れられている申し送りをするためのフォーマットです。
このフォーマットを取り入れた研究では、
・コミュニケーションエラーを3%減少
・73%のスタッフがチームコミュニケーションを実感
・申し送り準備時間の短縮に有用
・医療ミスは23%減少
・予測可能な有害事象の発生率を30%減少
等の結果が出ている様です。
申し送りが苦手な人は、このフォーマットに沿って申し送りを行うのも一つの手かも知れませんね!
じゃあ、使ってみようかと思うけど、上の表わかりにくい、、、。
じゃあ、さっきの一般病棟症例で実際に使ってみよう!
「I-PASS」の使い方は?
<症例>
・80代女性。発熱と呼吸苦があり体動困難となり救急搬送。検査の結果、誤嚥性肺炎にて一般病棟へ入院となる。
・既往に慢性心不全あり。
(入院時)
A:発声あり
B:酸素3LにてRR20回/分、SPO2;94%、副雑音なし。
C:HR 90回/分、BP120/60、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:37.2度
(入院後6時間)
A:発声あり
B:RR25回/分、SPO2;90%、副雑音:rhonchi(いびき音)。
C:HR120回/分、BP130/60、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:38.5度
→吸引施行しRR20回/分、SPO2:94%。腋窩温:38.5度にて解熱剤使用。
患者さんは要注意な状態です。
80代女性で発熱と呼吸苦があり体動困難となり救急搬送され、誤嚥性肺炎にて入院となりました。既往に心不全があります。酸素3LにてRR20回/分、SPO2;94%でしたが、RR25回/分、SPO2;90%、副雑音:rhonchi(いびき音)があり吸引施行しRR20回/分、SPO2:94%となりました。HR120回/分、BP130/60、四肢冷感なく腋窩温:38.5度で解熱剤を使用しています。
痰が多く、適宜評価していただき必要時は吸引をお願いします。また、解熱剤使用後ですので、熱型と循環も合わせて評価をお願いします。
今後、痰によって無気肺形成による低酸素血症や、発熱に伴う酸素消費量増大により急性心不全へ移行する可能性があります。
申し送り相手「わかりました。適宜評価し気道浄化と、熱型と循環動態に留意していきます。」
なるほど。この申し送り方法なら、考えなくても申し送れるわ!!
いやいや、、、。
なんかちょっと心配だな、、、。
まとめ
申し送りでは、
患者の全体像を把握
することが大切です。
「I-PASS」のフォーマットを使用した申し送りでも、「状態把握と不測の事態の想定」を説明する上でも、患者の全体像を把握することが大切になります。
申し送りを上手くする最大のコツは、「疾患の理解と患者の全体像を把握する」ことだと思います。
新人看護師におすすめの書籍や勉強方法の記事もありますので、ご参照下さい。