日々の臨床の中で、循環を評価する重要な指標としてあるのが「血圧」ですよね。看護師として働いている中で評価しない日はないであろう患者さんの状態を把握する上で重要な指標の1つだと思います。
その中で、皆さんはこんな疑問はありませんか?
・血圧ってどうやって決まるの?
・ショックの4分類ってなに?
ショックの4分類を理解する上で、血圧の決定因子を理解することは大切です。ショックの4分類を理解することができれば、医師の指示も理解することができますし迅速に対応する事ができるようになると思います。
一緒に学びを深めて
日々の看護に役立てていただければ幸いです。
・血圧の決定因子
・ショックの4分類
【結論】血圧の決定因子とショックの4分類
<血圧の決定因子>
血圧(水の勢い)=心拍出量(蛇口の開け閉め)×末梢血管抵抗(ホースを太さ)
<ショックの4分類>
・循環血液量減少性ショック
・心原性ショック
・血液分布異常性ショック
・心外閉塞、拘束性ショック
「血圧の決定因子」と「ショックの4分類」は上記の様になると思います。
なるほどね、、、。
全然わからんけど、、、。
そうだよね、、、。
じゃあまずは血圧の決定因子についてもう少し説明するね。
血圧の決定因子
<血圧の決定因子>
血圧(水の勢い)=心拍出量(蛇口の開け閉め)×末梢血管抵抗(ホースを太さ)
血圧を水の勢いで表すと、水を遠くに飛ばしたいときみなさんはどうしますか?
きっと、蛇口を開けて水の量を増やすか、ホースの出口をキュッと細めると思います。そうすれば、水を遠くに飛ばすことができると思います。
血圧(水の勢い)も同様で血圧を高くしたければ、①心拍出量(蛇口を開ける)をあげるか②末梢血管抵抗(ホースを細める)を増やす事になります。
①心拍出量(蛇口を開ける)をあげる
②末梢血管抵抗(ホースを細める)を増やす
そのため、血圧(水の勢い)はこれらの心拍出量(蛇口の開け閉め)と末梢血管抵抗(ホースの太さ)のバランスで調節されています。
なるほどね。
動脈硬化(ホースが硬くなっている)とかで抵抗が強くなると血圧が高くなるってことね!
そうだね!
じゃあ、心拍出量や末梢血管抵抗についてもう少し深掘りしてみよう!
心拍出量=(1回拍出量×脈拍)
<心拍出量>
心拍出量(蛇口の開け閉め)=1回拍出量×脈拍
心拍出量(蛇口の開け閉め)は、1回拍出量×脈拍で決定されます。
1回拍出量(1回心臓が収縮して出る血液量)が増えたり、脈拍が多くなると心拍出量は増加して結果的には血圧は上がります。その反対に1回拍出量が少なくなったり、脈拍が少なくなれば心拍出量は少なくなり結果的に血圧は低くなります。
また1回拍出量は、前負荷・後負荷・収縮力が関与しています。
<1回拍出量に関与する要因>
・前負荷:心臓収縮前にかかる負荷
・後負荷:心臓収縮時にかかる負荷
・収縮力:心臓が血液を押し出す力
これらの要因と脈拍が複雑に絡み合って心拍出量(蛇口の開け閉め)が決定されます。
なんか前負荷とか後負荷って
心不全を勉強したときに聞いたことある気がする。
そうだね!
心不全を理解するには必要な知識だね!
じゃあ、次は末梢血管抵抗について学ぼう!
末梢血管抵抗
<末梢血管抵抗に関与する要因>
・血管床の面積
・動脈壁の弾性
・血液の粘性
血圧(水の勢い)は心拍出量(蛇口の開け閉め)と末梢血管抵抗(ホースの太さ)で決定されます。末梢血管抵抗は上記のように血管床の面積・動脈壁の弾性・血液の粘性で決定されます。
<末梢血管抵抗↑>
・血管床の面積が低下
・動脈壁の弾性の低下
・血液の粘性が増加
<末梢血管抵抗↓>
・血管床の面積が増加
・動脈壁の弾性の増加
・血液の粘性が低下
末梢血管抵抗↑すれば血圧(水の勢い)が上昇しますし、末梢血管抵抗↓すれば血圧(水の勢い)が低下します。
血圧って様々な要因で調節されているんだ!
そうだね。
すごく複雑に様々な要因が絡み合って血圧が決定されています。
このバランスが崩れると、血圧が低下=ショックに陥ります。
では次はショックについて学んでいきましょう!
ショックとは?
生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。
出典:日本救急医学会ホームページhttps://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0823.html
日本救急医学会では、ショックは上記のように言われています。
心拍出量(蛇口の開け閉め)と末梢血管抵抗(ホースの太さ)のバランスが崩れた結果、血圧(水の勢い)が低下して結果としてショックに陥ります。
臨床で患者さんがショックに陥っていないかどうかを、看護師は早期に認識することが大切だと思います。
早期に認識するには、「ショックの5徴候」をいかに早期に捉えるかが大切になります。では、「ショックの5徴候」とは何かを次の項目で説明していきます。
ショックの5徴候
<ショックの5徴候>
・顔面蒼白(Pallor)
・虚脱(Prostration)
・冷汗(Perspiration)
・呼吸不全(Pulmonary insufficiency)
・脈拍触知不能(Pulseless)
ショックの5徴候には上記のような徴候があります。日々の臨床では、ABCDEに沿ってこのような徴候がないかどうかを常に評価していく必要があります。
ABCDEの評価については下記の記事でまとめてありますので参照下さい。
ショックの4分類
<ショックの4分類>
・循環血液量減少性ショック
・心原性ショック
・血液分布異常性ショック
・心外閉塞、拘束性ショック
ショックの4分類には「循環血液量減少性ショック」「心原性ショック」「血液分布異常性ショック」「心外閉塞、拘束性ショック」があります。
また、ショックの4分類を学ぶ前に、血圧低下に伴う代償機構を理解していた方が理解が深まると思います。
なるほどね!
そのまま血圧が下がり続けたらやばいもんね!
人間はどんな代償機構が働くの?
それを理解するには、
血圧の決定因子で考えるのがわかりやすいと思うよ!
<血圧の決定因子>
血圧(水の勢い)=心拍出量(蛇口の開け閉め)×末梢血管抵抗(ホースを太さ)
血圧(水の勢い)は心拍出量(蛇口の開け閉め)と末梢血管抵抗(ホースを太さ)で決定されます。
このときに、心拍出量(蛇口の開け閉め)が原因で血圧が下がった時は、
<血圧低下=心拍出量(蛇口の開け閉めが上手くいかない)が原因>
・末梢血管抵抗(ホースを太さ)を高めて血圧を維持する
心拍出量(蛇口の開け閉めが上手くいかない)が原因の際は、上手く蛇口をコントロールすることができないので、末梢血管抵抗(ホースをキュッとする)を高める事で血圧を維持しようとします。
なるほどね!
心拍出量でコントロールできないから、
末梢血管抵抗で代償するんだね!
その通り!
だから患者さんの反応としては四肢冷汗等が観察されるね!
では、末梢血管抵抗(ホースを太さ)が原因で血圧が下がった時は、
<血圧低下=末梢血管抵抗(ホースの太さ調節できず)が原因>
・心拍出量(蛇口の開け閉め)を高めて血圧を維持する
ふむふむ!
末梢血管抵抗でコントロールできないから、
心拍出量で代償するんだね!
そのだね!
だから患者さんの反応としては頻脈等が観察されるね!
血圧が下がらないように人間の体は、様々な代償機構が働いてなんとかショックへ移行しないように踏ん張ろうとしていまう。それでもショックになってしまった際は、下記の4つの分類に分けられます。
循環血液量減少性ショック
<循環血液量減少性ショックの原因>
・血液喪失
・体液喪失など
循環血液量減少性ショックは、下血や吐血などの血液喪失や脱水による体液喪失などで起こるショックになります。
血圧の決定因子で考えると、心拍出量(蛇口の開け閉め)が原因で蛇口をいくら開けても水が出てこないと一緒で心臓に血液が戻ってこないために拍出する血液が少ないため心拍出量が低下して血圧(水の勢い)が低下します。
そのため、代償反応としては1回拍出量が低下しているため心拍出量(蛇口の開け閉め)を補うために頻脈になったり末梢血管抵抗(ホースを太さ)を高めて血圧(水の勢い)を維持しようとします。
<循環血液量減少性ショックの代償反応>
血圧=心拍出量(1回拍出量×脈拍↑)×末梢血管抵抗↑
対応としては、下血や吐血などの血液喪失であれば原因に対する処置や輸血を行い、脱水による体液喪失であれば補液等を行います。そのため、看護師としては検査出しや輸血や輸液の準備をする必要があります。
心原性ショック
<心原性ショックの原因>
・心筋梗塞
・不整脈など
心原性ショックは、心筋梗塞や不整脈などで起こるショックになります。
血圧の決定因子で考えると、心拍出量(蛇口の開け閉め)が原因で蛇口をいくら開けても水が出てこない状態で心拍出量が低下して血圧(水の勢い)が低下します。
そのため、代償反応としては心拍出量(蛇口の開け閉め)を補うために末梢血管抵抗(ホースを太さ)を高めて血圧(水の勢い)を維持しようとします。
<心原性ショックの代償反応>
血圧=心拍出量(1回拍出量×脈拍)×末梢血管抵抗↑
対応としては、不整脈であれば抗不整脈や場合によっては除細動器の準備や、心筋梗塞であれば緊急でカテーテル治療の準備等が必要になります。
血液分布異常性ショック
<血液分布異常性ショックの原因>
・敗血症
・脊髄損傷
・アナフィラキシーなど
血液分布異常性ショックは、敗血症や脊髄損傷、アナフィラキシーなどで起こるショックになります。
血圧の決定因子で考えると、動脈の拡張=末梢血管抵抗(ホースを太さ)の低下や、静脈の拡張により相対的に血管内容量が不十分となり心臓に戻る血液量が減少=心拍出量(蛇口の開け閉め)の決定因子である1回拍出量が低下して血圧(水の勢い)が低下します。
<血液分布異常性ショックの代償反応>
血圧=心拍出量(1回拍出量×脈拍↑)×末梢血管抵抗↑
対応としては、敗血症であれば血液培養や抗菌薬の準備、アナフィラキシーであればアドレナリンの準備をする必要があります。
心外閉塞・拘束性ショック
<心外閉塞・拘束性ショックの原因>
・肺塞栓
・心タンポナーデなど
心外閉塞・拘束性ショックは、肺塞栓や心タンポナーデ、緊張性気胸などで起こるショックになります。
血圧の決定因子で考えると、心拍出量(蛇口の開け閉め)が原因で心臓が上手く血液を拍出することができない状態であり心拍出量が低下して血圧(水の勢い)が低下します。
<血液分布異常性ショックの代償反応>
血圧=心拍出量(1回拍出量×脈拍↑)×末梢血管抵抗↑
対応としては、心タンポナーデであれば心嚢穿刺や場合によっては手術が必要がなります。また、緊張性気胸では胸腔内の空気を脱気させる必要があります。
なるほどね!
ショックの原因によって対応が変わってくるんだね!
そうだね!
原因によって対応も違うから、医師と共通認識をしていれば
指示に対して迅速に対応することができるから看護師としてもショックの4分類を理解しておくことは大切だね!
まとめ
今回は、血圧の決定因子とショックの4分類について記載しました。
日頃から血圧に関しては評価していると思いますが、その患者さんが血圧が下がったときに心拍出量(蛇口の開け閉め)が原因なのか末梢血管抵抗(ホースを太さ)が原因なのかを考えることは大切で、ショックを考える上でも非常に大切になります。
治療を行っていくのは医師ですが、ベッドサイドで看護を行っている看護師が血圧が下がる前の代償機構が働いている間に早期に医師へ繋ぐことができれば急変する前に治療を開始することができるのではないかと思います。
呼吸における頻呼吸と同様に、循環おいても四肢冷汗や頻脈の患者さんは要注意して経過を見ていく必要があります。併せて、低酸素血症や酸素供給量の記事と共に日々の患者さんのアセスメントに役立てていただければ幸いです。