急性期の看護を日々行なっている看護師の皆さんは、周術期の患者さんを受け持つ機会が多いのではないでしょうか?
その中で、皆さんはこのような疑問はありませんか?
・周術期の患者さんを看るときって一体何が大事なの?
・スキルアップを考えてるけど何か資格あるの?
確かに急性期看護を行う看護師の多くは、周術期の患者さんを看る機会が多くあるね!
日頃から術後患者さんを看る機会が多いキャンタマが、患者さんを看る際に大切にしていることを説明するね!
・周術期看護とは?
・周術期(主に術後)の患者を看る時に大切なこと
・周術期におけるスキルアップをするための資格
【結論】「患者背景を考慮」することが大切!
周術期のみではないですが、周術期看護において大切なことは、
患者背景を考慮
することが大切になります。
術後でよくあるのは、術後の患者さんの状態や検査データだけをもとにアセスメントし看護を実施してしまうことです。
そうではなく、患者背景(術前や術中の状況)を考慮することが大切です。
確かに、、、。
学生の頃は全体像を考えて必要な看護を考えていたけど、臨床で働き始めて、その感覚がちょっと薄れていたかも、、、。
そうだよね。
学生の頃は1人の患者さんを深く考えていたけど、臨床では1人だけでなく入院基本料にあわせて、多くの患者さんを受け持つことが多いから、なかなかその視点が薄れることあるよね、、、。
もしかしたら、患者背景を考慮することなく術後の看護は実施できるかもしれません。しかし、先を見越した看護や何か起きた時の対応等には、やはり患者背景を考慮しながら看護を実践することが大切だと思います。
【結論】周術期管理チーム認定制度
術前・術中・術後(周術期)における基礎的な教育を受けた事を証明する第一歩となる資格
引用元:周術期管理チーム認定制度 https://public.perioperative-management.jp
周術期管理チーム認定看制度というのは、周術期における基礎的な教育を受けた事を証明する資格です。
キャンタマは周術期においては、主に術後の経験しかないので、術前・術中にどのような看護が必要なのかは一般的なことしかわかりませんが、この資格を取得される方は周術期のスペシャリストという事ですね。
周術期が好きな方など、スキルアップを考えている方には非常に良い資格だと思います。興味のある方は、下記からホームページを覗いてみてください。
過去問もありましたが、術後の看護しか経験したことがないキャンタマには難しかった、、、。
周術期看護とは?
患者、家族が手術を決定したときから、手術室へ入室し、手術の準備から術中、手術を終えて、手術室を退室し、手術侵襲から回復するまでのプロセスに関わる看護
引用元:日本手術看護学会 https://www.jona.gr.jp/gakkai_09.html
周術期看護とは、日本手術看護学会より上記のように言葉の定義がされています。
手術の前後を通して患者さんが回復するまでの看護のことを周術期看護っていうのね!!
その通りだね!
断片的に術前、術中、術後を看ていくのではなくで、看護する部署は違えど、「患者さんを退院まで継続看護」することが大切だね!
手術を受ける患者の中には、病棟→OPE室→集中治療室→病棟など部門間を超えるなど、療養環境が変わることがあると思います。
その中で大切なことは、
「申し送りを確実に行い継続看護」
する事だと思います。
申し送りが確実に行われないと、疼痛コントロールや離床が上手くいかず、術後合併症が起こり患者さんのQOL低下につながる可能性があります。
申し送りを確実に行い、継続看護をしていくことが周術期看護においても大切だと思います。
もちろん申し送りだけでなく、自分自身で情報収集することも必要です。
では、術前・術中・術後ではどのような情報を捉えていくことが必要なのかを、術前・術中・術後の項目に分けて振り返ってみましょう。
術前
・年齢
・既往歴
・内服歴
・術前のADL
・術前検査所見(呼吸機能や心機能、採血データなど)
・術式(侵襲度)などなど
なんかありきたりな項目だらけだな!
いや、、、。まぁそうだね、、、。
術前の情報は、「患者背景を考慮」する上で大切な情報が満載だよ。術後の看護をする上では、術後の情報だけでなく、術前の情報も考慮して看護を実践することが大切だよ!
術前では患者背景を考慮する上で、大切な情報が詰まっています。特に大切な情報は次の部門にも継続していく事が大切です。
また施設によっては、手術看護認定看護師や周術期管理チーム認定制度で資格取得した看護師が術前外来を行い入院する前から介入している施設もあるそうです。
入院する前から患者と関わり、手術に対する思いや不安に関する情報収集をしてくれると、入院後に関わる際に役立ちそうだね!
その通りだね!
医師だけでなく多くの職種が、様々な視点から患者さんをサポートすることは大切なことだね!
術中
・出血量
・IN/OUTバランス
・手術時間、麻酔時間
・術中トラブルの有無
・術中体位など
術中の情報においては、術後の回復過程を考慮するために、患者さんにどの程度の生体侵襲がかかったかを考えていくことが大切です。
そのためには、上記のような項目の情報を主にキャンタマは収集しています。
これもなんかありきたりな項目だらけだな!
まぁそうだね、、、。
当たり前だけど、術後に看護をしていくためには大切な情報だよ!
また、術中の体位は呼吸器合併症や褥瘡、神経障害の有無を評価する上で大切なポイントだね。
術後
・患者背景(術前・術中)
・術直後のABCDE評価
・術直後の検査データ
術直後は患者背景の情報やフィジカルイグザミネーションで得たABCDEの情報、様々な検査データを統合してフィジカルアセスメントする必要があります。
<用語:フィジカルイグザミネーション>
・患者の情報を得るための手段(問診・視診・聴診・触診・打診)
なんか急に難しくなったけど、、、。
ABCDEってなんだっけ?
ABCDEでの評価は、下記の記事でご紹介しているので、振り返ってみよう!
なるほどね。患者さんをABCDEでくまなく評価していくのか!!
そうだね!
患者背景やABCDE評価項目、検査データをもとにアセスメントをして術後の看護を実践していくことが大切だね!
じゃあ、症例で考えてみよう!
症例から考える
<症例>
・60代男性。既往歴:心不全。入院前のADL自立。呼吸機能検査:異常値なし。心機能検査:EF(左室駆出率)30%。直腸癌にて腹腔鏡下で低位前方切除術施行し手術時間は6時間で終了。術中出血量100mlでIN/OUTバランス+2000ml。術直後はICUに入室し状態安定していたため翌日に一般病棟へ移動される。術後3日目に患者より「ちょっと息苦しいな」とナースコールがあり訪室する。
(訪室時)
A:発声あり
B:RR25回/分、SPO2;95%、副雑音、呼吸減弱部位なし。
C:HR100回/分、BP100/50、Hr0.5ml/kg/h、四肢冷感なし。
D:GCS4/5/6
E;腋窩温:36.8度
なんか患者さん息苦しいとか言いはじめているけど、、、。
嫌な感じだな、、、。
確かに嫌な感じだね。
この術後の患者さんを患者背景も考慮して考えてみよう!
上記の症例においては、術前・術中の情報と共に術後のABCDE評価も含めた情報があります。
これらの情報をもとに、SOAPで記載するとこのような感じになるでしょうか。
S | 「ちょっと息苦しいな」 |
O | 60代男性。既往歴:心不全。入院前のADL自立。呼吸機能検査:異常値なし。心機能検査:EF(左室駆出率)30%。手術時間は6時間。術中出血量100mlでIN/OUTバランス+2000ml。 A:発声あり B:RR25回/分、SPO2;95%、副雑音、呼吸減弱部位なし。 C:HR100回/分、BP100/50、Hr0.5ml/kg/h、四肢冷感なし。 D:GCS4/5/6 E;腋窩温:36.8度 |
A | 術後3日となり生体侵襲による血管透過性亢進でサードスペース溜まったものが血管内に戻り、循環血液量が増加し元々心機能も悪く心不全の可能性あるか。Hr量と合わせて心不全増悪兆候に留意し、ポジショニングも含め心負荷のかからないようなケア介入を行なっていく必要あり。 |
P | 医師へ報告。心不全増悪兆候に留意し、心負荷を軽減するようなケア介入。 |
<用語:EF(左室駆出率)>
・心臓が拍出する血液量を心臓の拡張期容積に対する比率で正常値は50%〜80%。
こんな感じかな。
術後の情報だけで、術前や術中の情報がなければこのようなアセスメントはできなかったかも。
患者背景を考慮したアセスメントだね。
もしこのアセスメントができず医師への報告が遅くなっていたら、患者さんは急変していたかもしれないね、、、。
今回の症例では、心機能が悪くリフィリングに伴う心不全の可能性が示唆される症例を想定して作成いたしました。
術後は、実際の患者さんの情報だけで判断するのではなく、術前や術中の情報などの
患者背景を考慮
して実際の患者さんの状態と合わせてアセスメントすることが大切だと思います。
また、医師への報告方法(I-SBARC)は下記の記事を参照ください。
まとめ
今回の記事では、周術期における術後の看護ポイントをご紹介いたしました。
学生の頃は、当たり前のように全体像を把握し患者をアセスメントしていました。しかし、臨床で働き始めると、日々業務に追われたり、経験則からの看護実践により、なかなか患者背景を考慮したアセスメントができないことがあります。
質の高い看護実践をおこなうには、術後においてはやはり患者背景(術前・術中の情報)を考慮したアセスメントが必要になります。
日々の看護実践時にこの記事内容を思い出し、術後のアセスメント等に役立てて頂ければ幸いです。