新型コロナウイルス感染症の拡大により、酸素療法における高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula;HFNC)が注目されています。
高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は酸素療法においては、高流量の酸素療法になります。
看護師として働いていると、日頃よく酸素療法を行う患者さんを受け持つことがあると思います。酸素療法を受けている患者さんの看護を行う中で、酸素療法を理解して看護を行う必要があります。
ここでこんな疑問が出てきませんか?
・低流量と高流量ってなに?
・高流量におけるメリットってなに?
・各種酸素デバイスの特徴
・高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)ってなに?
日頃よく行いう酸素療法における看護を共に学びを深めていきましょう!
・酸素投与における低流量と高流量違い
・高流量の酸素療法におけるメリット
・各種酸素デバイスの特徴
・高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)のメリットや看護
【結論】酸素療法における低流量と高流量違い
酸素療法における低流量と高流量の違いは、30L/分以上の空気と酸素の混合ガスが供給できるかできないかです。そのため、30L/分以下が低流量で30L/分以上が高流量となります。
「低流量と高流量の違い」
・30L/分以上の空気と酸素の混合ガスが供給できるかできないか
「低流量」
・30L/分以下
「高流量」
・30L/分以上
鼻カニュラや酸素マスク、リザーバーマスクは、30L/分以下なので低流量です。ベンチュリーマスクや高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)は、30L/分以上で投与が可能なので高流量となります。
リザーバーマスクが低流量とかなんか意外!!
なんとなく30L/分必要は分かったけど、なんで30L/分必要なの?
そうだね!
そもそもの酸素療法の目的や適応と合わせて、なぜ30L/分必要かについても少しずつ説明していくね。一緒に学んでいこう!
酸素療法の目的
「酸素療法の目的」
室内気よりも高濃度の酸素を吸入させることで、低酸素症や低酸素血症を改善させる
酸素療法における目的は、低酸素症や低酸素血症の患者さんに対して様々な酸素デバイスを用いて室内気よりも高濃度の酸素を吸入させる治療になります。
室内気(酸素濃度:21%)で酸素化を維持できない人に、酸素を投与するために行うことが酸素療法ってことね!
そうだね!
低酸素血症には4つの原因があってそれによってそれによって実践する看護も変化します。気になる方は上記の記事をご参照下さい。
酸素療法の適応
一般に SpO2 94%(≒PaO2 75 Torr)未満が酸素投 与の適応となる。ただし,II型呼吸不全で,慢性呼吸 不全の急性増悪の場合は,SpO2 88% 未満あるいは, PaO2 55 Torr 以下を酸素投与の適応としてもよい。 また,低酸素血症の症状や身体所見(判断力の低 下,混迷,意識消失,不整脈,頻脈あるいは徐脈,血 管拡張,血圧低下,中心性チアノーゼ)を認め,低酸 素血症が疑われる場合や低酸素血症へ進行する危険性 が高い場合は,低酸素血症の確認が出来なくても酸素 投与を開始する。ただし,病態を評価し酸素投与が必 要ないと判断されれば中止する。
引用:酸素療法マニュアル(酸素療法ガイドライン 改訂版)
「酸素療法の適応」
・室内気にてSPO2<94%(ただし、Ⅱ型呼吸不全で、慢性呼吸不全の急性増悪の場合は、SPO2<88%)
・低酸素血症が疑われる状態(治療開始後に確認が必要)
体の中に酸素が少ない状態である上記のような患者さんが、酸素療法の適応になります。また、酸素は肺で取り込まれ、血液中のヘモグロビンによって全身の細胞に運ばれていきます。
この中で、大切な考え方の一つに酸素供給量という考え方があります。日々の看護に役立つ内容になりますので、興味のある方は下記の記事をご参照下さい。
酸素療法における低流量と高流量違い
「低流量と高流量の違い」
・30L/分以上の空気と酸素の混合ガスが供給できるかできないか
「低流量」
・30L/分以下
「高流量」
・30L/分以上
低流量と高流量の違いには、30L/分以上の空気と酸素の混合ガスが供給できるかできないかがあります。なぜ高流量には30L/分が必要なのかをお伝えしていきます。
まず、普段臨床でよく見る低流量における酸素デバイス(鼻カニュラ/酸素マスク/リザーバーマスク)は酸素流量によっておおよその酸素濃度が規定されています。
この酸素濃度は酸素流量+室内気が混ざり合い肺に届く時に上記の表に示された酸素濃度になると言われています。ここで大切なことは、この酸素濃度は「呼吸パターンによって酸素濃度が変化する可能性がある!」ということです。
「例;患者さんが頻呼吸」
・患者さんの分時換気量が上昇=室内気を吸う量が増加=酸素濃度が低下する可能性あり。
「例;患者さんが徐呼吸」
・患者さんの分時換気量が低下=室内気を吸う量が低下=酸素濃度が上昇する可能性あり。
このように、患者さんが頻呼吸であると室内気を多く吸うため、肺に届く混合ガスの酸素濃度が低下する可能性が出てきます。
その逆に、徐呼吸の場合は室内気を吸う量がすくなくなるために、混合ガスの酸素濃度が上昇する可能性があります。
大切なことは、「呼吸パターンによって酸素濃度が変化する可能性がある!」ということを認識することです。これがいわゆる低流量における酸素デバイス(鼻カニュラ/酸素マスク/リザーバーマスク)の特徴です。
これを踏まえて高流量ではどうなるか、、、
「成人1回換気量500ml×60回/分=30000ml=30L/分」
・成人が1回換気量がおよそ500mlで1秒に1回呼吸したとすると1分間で最大30L/分吸う。
高流量の規定である30L/分以上の流量では、いくら患者さんが頻呼吸になっても最大限の30L/分以上の混合ガスを投与すれば、「呼吸パターンによって酸素濃度が変化する可能性が少なく安定した酸素療法が可能!」となります。
そのため、患者さんの呼吸パターンや呼吸状態が不安定な時は、高流量の酸素療法が選択される方がメリットがあります。これが低流量と高流量の違いです。
「低流量:30L/分以下」
・患者の 1 回換気量以下の酸素ガスを供給する方式。
・不足分は鼻腔周囲の室内気を吸入することで補う。
「高流量:30L/分以上」
・患者に 1 回換気量以上の酸素ガスを供給する方式。
・患者の呼吸パターンに関係なく設定した酸素濃度を吸入させることができる。
なるほどね!
低流量と高流量の違いがわかった気がする。
でも、酸素デバイスって様々な種類があるんだね!
そうだね!
低流量と高流量で様々な酸素投与デバイスがあるよ!
じゃあ、次の項目では酸素投与デバイスの特徴を伝えるね!
各種酸素投与デバイスの種類と特徴
各種酸素投与デバイスにはそれぞれのデバイスで様々な特徴があります。この項目では、「低流量:30L/分以下」である酸素デバイス(鼻カニュラ/酸素マスク/リザーバーマスク)と「高流量:30L/分以上」であるベンチュリーマスクと高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)についてご紹介します。
鼻カニュラ
・低流量のため吸入酸素濃度は患者の1回換気量に依存
・酸素流量6L/分以上は推奨されない
・口呼吸の患者には推奨されない
・吸入しながら会話や食事が可能
鼻カニュラは、低流量の酸素療法になります。そのため、上記に酸素流量ごとにおける酸素濃度の目安を記載していますが、「呼吸パターンによって酸素濃度が変化する!」可能性があります。
また、酸素流量6L/分以上は鼻粘膜を刺激するため使用は推奨されていません。高濃度酸素投与を鼻から行いたいときは、在宅酸素療法ではリザーバー付鼻カニュラを使用することもあります。
酸素マスク
・吸入酸素濃度が正確に調整できない
・酸素流量は通常5L/分以上にする
・酸素流量は通常5L/分以下ではPaco2が上昇する可能性を考慮する
・Paco2上昇の心配がない患者に使用する
酸素マスクも鼻カニュラ同様に、低流量の酸素療法になります。酸素流量ごとの酸素濃度を上記に記載しましたが、吸入酸素濃度は正確に調整することが難しい酸素デバイスになります。
また、5L/分以下での使用では、酸素マスク内の呼気を再呼吸してしまいPaco2が上昇する可能性を考慮する事が大切です。特にPaco2が上昇する可能性の高い患者には、開放型酸素マスクを使用することがあります。
リザーバーマスク
・リザーバーバック内の酸素を吸入するため高濃度の酸素投与が可能
・リザーバーバックを膨らますため6L/分以上で使用する
・リザーバーバックが膨らんでいることや、吸気時にしぼむことを確認する
リザーバーマスクも酸素マスク同様に、低流量の酸素療法になります。ですが酸素マスクと比べてリザーバーマスクは、リザーバーバック内の酸素を吸入するため高濃度の酸素投与が可能です。
リザーバーバックを膨らますため6L/分以上で使用する必要があります。しかし、患者さんの1回換気量が多いと十分にリザーバーバックが含まらない事があります。
その際は、マスクに付属している一方弁を片方だけにするとリザーバーバックが膨らむ可能性があります。ですが、室内気を多く吸うことになるので酸素流量に見合う酸素濃度に達しない可能性があるので注意が必要です。
このような患者さんの場合は、
高流量の酸素デバイスを使用した方が安定した酸素供給ができると思います。
ベンチュリーマスク
・24%〜50%の酸素濃度を安定して投与する事ができる
・設定酸素濃度ごとに推奨酸素流量が決められている
ベンチュリーマスクは高流量の酸素療法になります。患者さんの呼吸パターンに左右されずに安定した酸素濃度を投与する事ができます。
ベンチュリーマスクではカラフルなダイリューターを用いて、24%〜50%の酸素濃度を設定して設定酸素濃度ごとに推奨酸素流量が決められています。またベンチュリーマスクは、ベンチュリー効果を活用して高流量の酸素療法となります。
ベンチュリー効果とは?
投与された酸素が、狭い箇所を通過する際に流速が上がります。その際に、圧力が低い部分が作り出されて周囲の室内気の空気が引き込まれます。そうする事で、設定酸素濃度を30L/分以上の高流量を作り出して投与する事ができるものです。
高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow nasal cannula;HFNC)
・Fio2を21%から100%で総流量60L/minで投与できる
・解剖学的死腔内のCO2を洗い流し死腔換気量を減らせる
・気道内陽圧をかけて軽度のPEEP効果が得られる
・十分な加温加湿が可能で線毛機能の維持,気道浄化,喀痰喀出をうながす
ベンチュリーマスクと同様に高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)も高流量の酸素療法になります。ベンチュリーマスクでは投与できなかった高濃度の酸素濃度を高流量で投与する事ができます。
また、解剖学的死腔内のCO2を洗い流し死腔換気量を減らし,ガス交換や換気効率を上げる事ができます。そして、気道内陽圧をかけて軽度のPEEP効果があります。
「PEEP(呼気終末陽圧)」
・呼気時に陽圧がかかることで、肺胞の虚脱を防ぐと共に膨らみやすくする事ができる。
PEEP?
わかるような、わからないような、、、。
風船と一緒のイメージかな。
「0から風船を膨らませるより、ある程度膨らんでいるところから膨らました方が膨らみやすい」ってイメージかな。
なるほど。
そのほうが肺胞も膨らみやすいってことね。
まとめ
今回の記事では、酸素療法における低流量と高流量の違いについて説明させていただきました。
様々な酸素デバイスにはそれぞれ特徴があります。医師の指示で様々な酸素デバイスを使用しますが、その一つ一つの酸素デバイスの特徴を理解して「患者さんに合った酸素デバイスなのか?」「適切な酸素療法が行えているか?」を患者さんを評価して医師へ繋げていくことは大切だと思います。
今回の記事が皆さんの日々の看護に少しでもお役に立てれば幸いです。
また、この記事以外にも様々な「看護師の豆知識」の記事を作成していますので、興味のある内容がありましたらお読みいただければ幸いです。